東京大学生産技術研究所 長谷川研究室

毛細血管網における血管構造理モデリングに関する研究

毛細血管網における血管構造理モデリングに関する研究

生物は、限られた心臓のポンプ動力で身体中の細胞に酸素や栄養を運ぶために、非常に効率の良い血管網を形成しています。工学の設計においても、少ないポンプ動力で、与えられた領域に熱や物質を効率良く輸送することが大きな課題になります。

生物に学び、その構造や形成プロセスを理解すれば、これまで人間が考えたものとは全く違う、効率的な流路ネットワークの構造が見つかるかもしれません。 そこでまず生物の観察からスタート。 
マイクロチップ上で細胞を培養し、血管形成の様子を観察したり(ドイツのマックス・プランク研究所・中山研究室、および東大生研・松永研究室と共同研究)、胚が透明なため血管構造のライブイメージングが可能な「ゼブラフィッシュ」を観察しています。(国立循環器病研究センターと共同研究)生体内の血管網形成では、第一段階では、組織内に血流を行き渡らせるために、ランダムな血管網を形成します。その後、血管を構成する血管内皮細胞が、重要な血管とそうでない血管を認識し、重要な血管は太く安定化し、不必要な血管が退縮、消滅することにより、階層的・秩序的な血管網特有のパターンが現れてきます。ここで、生体がどのように重要な血管と不要な血管を見分けているかが重要になります。それを定式化できれば、工学システムへの応用も可能になると考え、研究を進めています。 
なお、がんや様々な疾患においても、血管網の異常が生じることが知られており、血管形成のプロセスを定式化し、これを望ましい構造へ変化させる方法を明らかにできれば、新しい治療法の開発に役立つ可能性があります。

 

 
生体内を模擬した流路ネットワーク最適化
Reference: Hasegawa & Nakayama (2019)

         
ゼブラフィッシュ脳内血管網の3次元再構築
黄色い線:各血管の中心線
白点:血管中心線上のノード、赤点:分岐点、青点:各血管の端点
(国立循環器病センター、中嶋洋行博士との共同研究)

ポスター