東京大学生産技術研究所 長谷川研究室

マイクロ流体内における微粒子挙動の予測と制御

マイクロ流体内における微粒子挙動の予測と制御

・マイクロ混合

ごく少量の液体を効率よく混ぜ合わせる「マイクロミキサー」について研究しています。 例えば、血液の検査では血液と試薬を混ぜ合わせて反応させ、分析を行います。 少量で分析ができれば、患者の負担や検査薬コストなどを抑えることができます。

私たち(中央大学鈴木宏明研究室との共同研究)は、数ミリ立方メートル(100万分の1リットル)という微小容器内に、100マイクロメートルのピラー(突起物)を作り、容器自体を回転させることで、容器に入れた液体と粒子を効率よく混合するという方法を考案しました。
従来のマイクロミキサーでは、長い流路やポンプなどの付属構造が必要でしたが、この方法は非常にシンプルな構造で小さく作ることができ、混合度も高いのが特長。 
実際にこの容器を作成して回転させ、共焦点顕微鏡とハイスピードカメラで混合の様子を観察すると、ピラーの周りに循環流ができているのがわかりました。 
将来的には、当研究室で開発している逆解析ツールを応用して、最適な容器やピラーの形状、振動モードなどを見つけることを目指しています。これも、最適化から実証実験までを行うことができる当研究室の強みを生かした研究です。

 

 

                    

旋回振動を与えたマイクロピラー群周りの(左)粒子挙動の可視化, (右)流れと粒子のシミュレーション
(中央大学、鈴木宏明教授との共同研究)
Reference: Kaneko et al. (Micromachines, 2018)

 

旋回振動流を利用したポンプレスカオス混合器の数値シミュレーション
Cheminas 44, 2021年11月9-11日, 発表者:金子完治

 

・微粒子の配列

3次元空間をスキャンして、立体的な粒子分布を見ることができる「共焦点顕微鏡」。
この装置を用いて、溶液中の分子の動態を観察しています。 
身近な現象ですが、テーブルに落ちたコーヒーのしずくが乾くとき、しずくの外縁にコーヒーの粒子が偏りリング状のしみが現れます。なぜいつも必ずそのような現象が起こるのでしょうか? 溶液が流れ広がり蒸発する過程で、液中の粒子はどのように動くのでしょうか?
この研究では、液体中の粒子の動きをモデル化し、最終的には粒子を自由に制御することを目指しています。

フィルムや薄膜、表面処理など、製造・加工の技術で、溶液塗布によって粒子を薄く均一にムラなく付着させるプロセスがあります。
例えば、燃料電池、太陽電池、リチウムイオン電池の性能を決める電極は、材料の微粒子を含むスラリーを基板上に塗布、乾燥させて薄膜を形成します。薄膜の微細構造を高精度に制御できれば、電池の性能を飛躍的に高くすることも可能です。 
経験に頼って行われていた加工プロセスを、最適化するために本研究が役立つと考えています。

 

 

・界面構造のトポロジー最適化


固体酸化物形燃料電池における電解質/燃料極メゾスケール界面構造のトポロジー最適化
左)計算条件、中)異なる初期条件からの最適化(色:ポテンシャルの等値面)、右)最適化過程における底面の形状とポテンシャルの変化
(東京大学 生産技術研究所 鹿園教授との共同研究)
Reference: Onishi et al. J. Electrochem. Soc (2019)

ポスター