東京大学生産技術研究所 長谷川研究室

伝熱面のトポロジー/形状最適化

伝熱面のトポロジー/形状最適化

 熱と流体に関わる機器は身近にもたくさんあり、設計上の課題や改善改良のニーズが高い分野です。 例をあげると、ジェットエンジンや火力発電に用いられるタービン翼など、高温の流体に晒される部品では、耐熱温度を越えると部品そのものが溶けたり壊れたりするため、熱を逃がしながら冷却空気を流す構造が必要です。 

情報端末や電気自動車の急速な普及によって、電子デバイスの冷却が重要な課題となっています。電子部品は熱により誤作動や故障を起こすため、空冷や水冷の機構が様々に工夫されています。 現代社会はエネルギー変換の上に成立しており、最も良く使われるエネルギー形態の一つである熱輸送の制御は、エネルギーの有効利用の観点から非常に重要です。異なる流体間の熱交換を行う機器は一般に熱交換器と呼ばれますが、より効率のよい熱交換器が設計できれば省エネルギーに大きく貢献できます。 
こうした熱流体に関わる部品や構造の最適化において、当研究室で開発した「複雑3次元形状の決定論的最適化ツール」が有効です。
事例: 温泉水の熱を利用した発電システムにおける、温泉水流路の設計。

 



効率よく熱を取り出す流路として、波状の凹凸がある流路が提案されています。この形状に当研究室の随伴解析プログラムを適用し、最適な伝熱面形状を求めました。動画では、随伴解析によって得られた伝熱面表面の感度分布を示します。得られた感度に従って、形状を変更することにより、最適な形状を求めています。

         
斜交波状フィンの伝熱促進および圧力損失低減のための(左)形状最適化, (右)トポロジー最適化
壁面上の色はコスト関数に対する感度を表す。


伝熱促進および圧力損失低減のためピンフィンの形状最適化
ピンフィン上の色はコスト関数に対する感度を表す.横のグラフは、形状更新に伴う圧力損失と伝熱の変化を示す。
形状更新を繰り返すことで、圧力損失に対する伝熱の割合が向上する様子が分かる。
Reference: Kametani et al., J. Thermal Science and Technology (2020)

計算で得られた最適形状を実験的に実証することは極めて重要です。 
当研究室では、最適化計算で得られた形状を3Dプリンタで作成し、実際に流体を流して測定。計算結果と実験結果を照らし合わせて、その性能を実証することも行っています。 
最適化からその実証までを一つの研究室で行うことは少なく、これも当研究室の特長のひとつです。 形の最適化については、自動車業界、重工業など企業との共同研究を積極的に行っており、その成果は多数の特許にも反映されています。

                                                          


固体酸化物形燃料電池における電解質/燃料極メゾスケール界面構造のトポロジー最適化
左)計算条件、中)異なる初期条件からの最適化(色:ポテンシャルの等値面)、右)最適化過程における底面の形状とポテンシャルの変化
Reference: Onishi et al. J. Electrochem. Soc (2019)

 

ポスター