東京大学生産技術研究所 長谷川研究室

研究中のテーマ

研究中のテーマ

乱流やそれに伴う熱・物質輸送の最適化

乱流境界層における抵抗低減や伝熱促進を目的として、大規模数値シミュレーション技術と最適制御理論などの数理的アプローチを用いて、乱流制御アルゴリズムの研究を行っています。これにより、航空機、船舶、自動車などの輸送機器の高効率化、省エネルギー化を実現し、エネルギーの有効利用に貢献します。[詳細]


壁吹き出し/吸い込みを用いた壁乱流の最適制御
(左)非制御時(右)制御時
青は低速領域、白は渦コアを示す。右図の壁面場の色は制御入力を表す。



平行平板間完全発達流における壁面吹き出し・吸い込み進行波制御時における主流方向速度と温度
(上)非制御時(下)制御時
Reference: Kaithakkal et al. (J. Fluid Mech., 2020)

伝熱面のトポロジー/形状最適化

太陽熱、地熱などの自然エネルギーやプラントからの排熱を効率よく回収し、電気エネルギーなどの利用価値の高いエネルギー形態へ変換するニーズが高まっています。本研究では、これらのアプリケーションにおいて、流体間での熱交換を行う際に用いられる熱交換器の形状最適化を進めています。[詳細]

         
斜交波状フィンの伝熱促進および圧力損失低減のための(左)形状最適化, (右)トポロジー最適化
壁面上の色はコスト関数に対する感度を表す。

毛細血管網における血管構造理モデリングに関する研究

生体において、毛細血管網は、酸素や栄養の組織全体への輸送、二酸化炭素や老廃物の除去に関して本質的な役割を担っています。この目的を実現するために、毛細血管網は、物質輸送に関して最適な構造を取ると考えられます。本研究では、医学、生物学、生体工学の研究者と協働して、毛細血管網の形成過程の理解を深めることで、生体における構造最適化の原理を明らかにすると共に、医学や生物学に貢献することを目指します。[詳細]

       
ゼブラフィッシュ脳内血管網の3次元再構築
黄色い線:各血管の中心線
白点:血管中心線上のノード、赤点:分岐点、青点:各血管の端点
(国立循環器病センター、中嶋洋行博士との共同研究)

有限のセンサ情報に基づく熱流動場の状態推定

流れやそれに付随する温度場、濃度場は、その強非線形性、超多自由度性のために、極めて複雑な時空間分布を有します。一方、我々が観測できるのは限られた位置の物理量のみです。近年、IoTの進展によって環境中の多様なセンサ情報が利用できるようになりつつあります。我々は、これらのセンサ情報を統合し、数値シミュレーションへ融合するフレームワークを構築し、大気や海洋における環境モニタリングシステムの構築を目指しています。[詳細]


ランダムに配置されたセンサ情報に基づく乱流場の再構築
左) 正解場 右)センサ情報をシミュレーションに取り込むことにより推定された乱流場
右図の黄色い点はランダムなセンサ位置を表し、センサの数が増えるに従って、推定場が正解場へ近く様子が分かる。
Reference: Suzuki & Hasegawa, J. Fluid Mech. (2017), Liu & Hasegawa (2020)


乱流環境中における限られたセンサ情報に基づくスカラー源推定
(左)順解析、(右)随伴解析
Reference: Cerizza et al. (Flow Turb. Comb., 2016), Wang et al. (J. Fluid Mech., 2019)

マイクロ流体内における微粒子挙動の予測と制御

小さいスケールでは、表面力が体積力に対して卓越するようになり、大きなスケールでは見られない新たな流体の物理が見られるようになります。本研究では、エネルギーデバイス、光学デバイスなどの製造プロセスや生化学分析等のアプリケーションで重要となる、微小スケールにおける流体中の粒子の挙動やその制御に関する研究を進めています。[詳細]

                    

旋回振動を与えたマイクロピラー群周りの(左)粒子挙動の可視化, (右)流れと粒子のシミュレーション
(中央大学、鈴木宏明教授との共同研究)
Reference: Kaneko et al. (Micromachines, 2018)